株式会社インベストメントカレッジ
吉田健吾
累計12万5000人以上の個人投資家が学ぶ投資スクール「Daily Wealth」の運営責任者。講師には、カリスマFXトレーダーの維新の介を始め、毎年億を稼ぐプロトレーダー、不動産投資歴19年の元祖サラリーマン大家、FX・株・先物・不動産投資、ベンチャーキャピタルなど幅広く精通する大分の投資家など、一流のトレーダー・投資家がいる。
FXでは次にどんな為替変動が生じるのか予想して取引しますが、ただ何となくチャートを見て予想すればいいというものではりません。
テクニカル分析やファンダメンタルズ分析などを用いながら為替変動の予想精度を高めることで、初めて安定した利益を得られます。手法にはATRというものがありますが、どのような手法なのでしょうか?
そこで今回は、FXの手法の1つであるATRとはどんなものか、分かりやすく解説します。
Contents
FXのATRとは
FXは、現在の為替と比べて将来の為替がどのように変動するのか予想して取引することで差益を得ます。
上がるか下がるか予想するだけなので単純に考えれば勝率は50%ですが、為替変動はトレーダーたちが生み出しているものであるため、どのような考えで取引しているのか理解できればより勝率を上げることが可能です。
ATRとは、「アベレージ・トゥルー・レンジ」の略で、J・ウェルズ・ワイルダー氏によって開発された取引手法です。
J・ウェルズ・ワイルダー氏は、ピボットやパラボリックなどの取引手法も開発した人で、FXの世界では有名人です。
ATRでは、ボラティリティ(変動率)からFX相場の過熱感(買われ過ぎ・売られ過ぎ)を判断できます。
詳しくは後述しますが、FXの為替変動を予想する手法は、大きくファンダメンタルズ分析とテクニカル分析の2つに分類されます。
それぞれの手法について詳しく見ていきましょう。
ファンダメンタルズ分析
ファンダメンタルズ分析とは、国際的な景気や経済状況、通貨を発行している国の経済指標などに基づいて為替変動を予想する手法です。
ファンダメンタルズ分析には、以下のような情報を用います。
- 経済指標
- 金融政策
- 長期金利
- 要人発言
- 国勢
例えば、通貨を発行している国の経済指標が良かった場合には、国の景気が良いことを意味しているため、その国の通貨が買われて通貨高になります。
反対に悪かった場合には、国の景気が悪化していることを意味しているため、その国の通貨が売られて通貨安になります。
これらの指標は基本的に予想などが公表されているため、短期的な為替変動より長期的な為替変動に影響を及ぼすのが一般的です。
しかし、予想と結果に誤差があるまたは地政学的リスクが上昇した場合などには、短期的な為替変動に大きな影響を与えます。
スキャルピングやデイトレードなどの短期的な取引に用いることは比較的少ないですが、相場の流れは経済指標などの影響を受けるため、定期的にファンダメンタルズ分析を行うことが重要と言えるでしょう。
テクニカル分析
テクニカル分析とは、為替変動の値動きを分かりやすくグラフ化したチャートを分析して為替変動を予想する手法です。
テクニカル分析には以下のようなものがあります。
- ローソク足
- 単純移動平均線
- ボリンジャーバンド
- RSI
- MACD
- ストキャスティクス
- パラボリック
- ATR
テクニカル分析を駆使することで、相場の状況、トレーダーの心理状況などを調べることが可能ですが、100種類以上あると言われています。
1つの手法でいくつか情報を得ることもできますが、不足する情報は他で補うなど、それぞれの手法のメリットとデメリットをよく理解してから取引を始めましょう。
ATRの具体的な考え方
ATRとは、ボラティリティ(変動率)からFX相場の過熱感(買われ過ぎ・売られ過ぎ)を判断するものですが、どのように判断するのでしょうか?
ATRでは、1日の変動幅を見ずに真の変動幅を見ることで相場の過熱感を判断します。
例えば、前日の為替変動が始値100円、高値101円、安値100円、終値101円だとします。
翌日が始値102円、高値104円、安値102円、終値104円だとすると、当日は104円から102円を引いた2円の変動ですが、前日の終値から当日の始値までも変動も考慮して3円の変動が生じたと考えるのがATRで用いる真の変動幅です。
ATRの計算式
ATRで用いる真の変動幅を算出する際には、以下の3つの中から最大の値幅を選択して使用します。
- 当日高値と当日安値の差:当日高値-当日安値
- 当日高値と前日終値の差:当日高値-前日終値
- 当日安値と前日終値の差:当日安値-前日終値
これらの計算で求めた真の変動幅が高水準で推移しているか、低水準で推移しているかによって相場の過熱感を判断します。
ATRをFXで用いる場合の使い方
ATRの計算方法は分かったところで、実際にATRをFXで用いる場合は、どのように使えばいいのでしょうか?
ATRをFXで用いる場合には、為替変動が上昇トレンドにあるかまたは下降トレンドにあるかによって異なってくるので注意が必要です。
それぞれのトレンドでATRを用いる場合の使い方について詳しく見ていきましょう。
為替変動が上昇トレンドにある
ATRが上昇していて、為替変動が上昇トレンドにある場合は、為替が上昇する勢いが強いと判断できます。
そのため、短期的には買いが持続していると判断しても問題ないので、買いポジションで取引に参加するのが一般的です。
一方、ATRが上昇から下降に転換していて、為替変動が上昇トレンドにある場合は、為替の上昇の勢いが弱まりつつあると判断できます。
そのため、下降トレンドに転換する可能性が高いので、売りポジションで取引に参加すると安定した利益を得られるでしょう。
為替変動が下降トレンドにある
ATRが上昇していて、為替変動が下降トレンドにある場合は、為替が下落する勢いが強いと判断できます。
そのため、短期的には売りが持続していると判断しても問題ないので、売りポジションで取引に参加するのが一般的です。
一方、ATRが上昇から下降に転換していて、為替変動が下降トレンドにある場合は、為替の下落の勢いが弱まりつつあると判断できます。
そのため、上昇トレンドに転換する可能性が高いので、買いポジションで取引に参加すると安定した利益を得られるでしょう。
他の分析手法と組み合わせることが重要
FXの為替変動を予想する目的でATRを用いる際には注意が必要です。
その理由は、相場の過熱感しかATRで読み取れないためです。
ATRでボラティリティ(変動率)からFX相場の過熱感(買われ過ぎ・売られ過ぎ)を判断できても、どこまで上がるかどこまで下がるかは判断できません。
ATRをうまく駆使してエントリーのタイミングとどちらのポジションでエントリーするか判断できても、決済のタイミングを逃してしまうと大きな損失を抱えるリスクがあります。
そのため、ATRを用いてFXの取引を行う際は、ATR以外にもボリンジャーバンド・RSI・MACD・ストキャスティクス・パラボリックなどと組み合わせることが重要です。
安定した利益を継続的に得るためにも、ATRとはどんなもので弱点はないのかなど、ATRの特徴をよく理解してから取引に用いましょう。
まとめ
ATRはテクニカル分析の1つですが、ボラティリティ(変動率)からFX相場の過熱感(買われ過ぎ・売られ過ぎ)を判断できるものです。
ATRを用いることで、現在の為替変動の状況が判断しやすくなるため、適切なタイミングで正しい方向にエントリーできるようになりますが、決済のタイミングについてはATRでは分かりません。
そのため、ATRをFXの取引に用いる場合には、ATRだけでは不足する情報を補ってくれる他の手法と組み合わせて取引しましょう。