株式会社インベストメントカレッジ
吉田健吾
累計12万5000人以上の個人投資家が学ぶ投資スクール「Daily Wealth」の運営責任者。講師には、カリスマFXトレーダーの維新の介を始め、毎年億を稼ぐプロトレーダー、不動産投資歴19年の元祖サラリーマン大家、FX・株・先物・不動産投資、ベンチャーキャピタルなど幅広く精通する大分の投資家など、一流のトレーダー・投資家がいる。
FXは購入したものを売却する現物取引ではなく、証拠金取引という取引方法であるため、自己資金以上に取引できるレバレッジ取引が可能です。
しかし、レバレッジは最大25倍と決まっており、今後は引き下げも検討されていますが、どの倍率で取引するのが理想なのでしょうか?
そこで今回は、適切なレバレッジ倍率と今後レバレッジ倍率規制がどうなるのかについて解説します。
Contents
レバレッジ倍率とは
1ドル110円の米ドルを1万通貨取引しようとすると、110円×1万通貨=110万円が必要です。
株式投資では、1日に数%以上の変動が生じることはよくありますが、為替投資では、1日に1%以上の変動が生じることはあまりありません。
このように為替取引は、多額の資金が必要であるにもかかわらず、為替変動が小さいのであまり魅力がありません。
そこで登場したのが、FXです。
FXは、証拠金取引と呼ばれる取引方法で、レバレッジを効かせることによって自己資金以上の取引が可能です。
例えば、1ドル110円の米ドルを1万通貨取引する際は110万円必要でしたが、レバレッジ倍率が100倍だと100分の1で済むため、1万1,000円で取引できます。
レバレッジ倍率は高ければ高いほど資金を少なく抑えられるため、効率良くお金を増やしていけると言えるでしょう。
2010年には50倍以下、2011年には25倍以下
FXの取引ができるようになった当初は、レバレッジ倍率500倍といった取引が可能でした。
500倍では、10万円の資金で5,000万円の取引ができるため、10万円で取引した時よりも500倍の利益が期待できます。
しかし、利益が500倍になる一方で、裏を返すと損失も500倍になるリスクが潜んでいることになります。
ハイレバレッジの取引は、投資的な側面よりも投機的な側面が強いのであまり良い状況とは言えませんでした。
2008年には、ハイレバレッジで取引していた人が大きな損失を抱える事態が発生しました。
それが、リーマン・ショックです。
そこで金融庁は、投資家保護のために、倍率を2010年に50倍以下、2011年に25倍以下に引き下げました。
2019年現在はレバレッジ倍率の上限が25倍に設定されていますが、25倍でも依然としてリスクが高いと言えます。
そのため、FX初心者の場合には、25倍ではなく2~3倍などの低い倍率で取引した方がリスクを抑えられるでしょう。
レバレッジ倍率はそのうち10倍に引き下げられる?
レバレッジ倍率の上限は、2018年に25倍から10倍に引き下げる案が浮上していました。
しかし、FX業者の強い反発などもあって見送られましたが、レバレッジ倍率がさらに引き下げられる可能性があることを覚えておいた方が良いと言えます。
なぜ、レバレッジ倍率の引き下げが2018年に検討されていたのでしょうか?
倍率が引き下げられる要因となったのは以下の5つです。
- スイスショック
- 豪ドルの乱高下
- 震災リスク
- 北朝鮮問題
- 米中の貿易戦争
それぞれの要因について見ていきましょう。
スイスショック
1つ目の要因は、スイスショックです。
スイス銀行は、過度なスイスフラン高を抑える目的で、ユーロスイスフラン無限介入をすると発表しました。
1ユーロ1.20スイスフランが上限になるように設定して、上限を上回った場合にはスイスフランを売るという内容です。
この無限介入で1ユーロ1.10スイスフランが、1ユーロ1.20スイスフランになりました。
しかし、2015年にこの無限介入を突如撤廃することになりました。
その結果、1ユーロ1.20スイスフランだったのが、一時0.85スイスフランへと41%急落しました。
日本ではレバレッジ上限が25倍に引き下げられた後でしたが、ロスカットが間に合わずに証拠金がマイナスになってしまう人が続出しました。
このスイスショックでは、1,000人を上回る投資家に約34億円の未収金を生じさせたため、倍率の引き下げの検討要因となりました。
豪ドルの乱高下
2つ目の要因は、豪ドルの乱高下です。
積極的に取引されている外貨は比較的板が厚いため、あまり大きな為替変動が生じにくいと言えます。
しかし、豪ドルのようなマイナー通貨は板が薄くなりやすいため、ちょっとした要因で大幅な為替変動が生じるケースが多々あります。
為替変動が他の通貨と比較して大きくなりやすい豪ドルは、効率良く利益を得られるため、FXの取引に慣れた人にとって魅力的な通貨です。
しかし、過去に1日で12.5%もの変動が生じたこともあるなど、レバレッジ8倍でも証拠金が0になるリスクと隣り合わせです。
大きな変動が生じやすい通貨があることも、倍率引き下げの検討要因と言えるでしょう。
震災リスク
3つ目の要因は、震災リスクです。
2011年3月11日に東日本大震災が発生した時は、前日の3月10日に1ドル82.97円だったのが、3月17日に76.25円と円高ドル安が進行しました。
福島の原発事故の影響で、円高ドル安が進行していたところにヘッジファンドが仕掛けたことが引き金になったと言われています。
スイスショックの時と同様、ロスカットが間に合わずに証拠金がマイナスになってしまう人が続出しました。
この東日本大震災では1万件、約16億円の未収金を生じさせたため、倍率の引き下げの検討要因となりました。
北朝鮮問題
4つ目の要因は、北朝鮮問題です。
現在は落ち着いている北朝鮮問題ですが、一時は緊張感が高まる状況が続いていました。
ミサイルを打てば為替が変動するなどのように、経済状況がミサイルに左右される時期が続いていました。
現在は落ち着いていると言えますが、まだ完全に解決したわけではありません。
様子見で北朝鮮が新たにミサイルを発射したことに加えて、イランの核開発問題が浮上しています。
戦争リスクが高まって乱高下が続き、未収金が生じる事態が続けば、倍率引き下げがより現実的になると言えるでしょう。
米中の貿易戦争
5つ目の要因は、米中の貿易戦争です。
2019年に入ってからは一時的な下落はあったものの、順調に円安ドル高が進行しており、1ドル112円を目指す展開となっていました。
しかし、アメリカが中国からの輸入品に対して関税をかけるという発言をきっかけに、貿易戦争が勃発しました。
アメリカのトランプ大統領がTwitterでつぶやくと、大きな為替変動が生じるという事態が続いており、一時112円だった米ドルもわずか数日で109円になりました。
2019年は、年始の板が薄い時を狙ったヘッジファンドの仕掛けで損する人も生じたことを考えると、再検討のきっかけになる可能性が高いでしょう。
倍率規制時はロスカットに注意
「倍率規制でレバレッジ倍率が引き下げられても取引の規模が小さくなるだけでは?」と思った人もいるかもしれませんが、大きな影響が生じる可能性があるので注意が必要です。
例えば、レバレッジ倍率を引き下げるということは、それだけFXをする人が減る、1回の取引で得られる手数料(スプレッド)が減るため、FX業者の業績が悪化します。
業績が悪化すれば、業者の撤退やキャンペーン減少、スプレッドの拡大といった悪影響が生じる可能性があります。
また、レバレッジ25倍で取引してギリギリロスカットされないポジションを有していても、10倍なったことでロスカットされる可能性があります。
いきなり強制ロスカットされて大損する可能性もあるので、倍率規制の状況がどうなっているか、適宜確認しておきましょう。
まとめ
FXでは、レバレッジと呼ばれる自己資金以上に取引できる仕組みを活用すれば、効率良く資金を増やしていくことが可能です。
例えば、レバレッジ100倍であれば、10万円の資金でも1,000万円までの取引が可能です。
しかし、レバレッジ100倍では、利益を100倍にできる一方、損失も100倍になるので十分に注意が必要です。
現在は、倍率の高いハイレバレッジ取引で自己資金以上の損が生じた人が多かったため、レバレッジ25倍に上限が決まっています。
為替変動が不安定であることを理由に10倍に引き下げる案も浮上していますが、決まった場合には現在保有しているポジションが強制ロスカットになる可能性があります。
大きな損を抱えてしまう可能性があるため、レバレッジに関する規制が今後どうなるのか適宜情報収集しておくだけでなく、大きな損を抱えないためにもなるべく低い倍率で取引しましょう。